研究課題
低出力超音波パルス(LIPUS)は骨折に対する治療においてその修復過程を促進することが報告されている。近年、開発された人工骨であるハイドロキシアパタイト多孔体(IP-CHA)は、優れた骨伝導能を持ち、骨切術や腫瘍切除術後などに生じる骨欠損部に使用する上で優れた補填材である。しかし、IP-CHA内部に新生骨が形成されるまでには長い期間を要する。我々は、LIPUSがIP-CHA内の新生骨形成に対して促進的に働くと考え、その効果について検討した。まず、LIPUSの機械的刺激がIP-CHAの強度を低下させないことを調べる目的で、水中にてLIPUSを48時間連続照射し、その強度を非照射群と比較した。その結果、LIPUS照射によって、圧縮強度の有意な低下は認めなかった。次にNew Zealand white rabbitsを用いた動物実験を行った。両側の大腿骨顆部に直径4mmの骨孔を作成後、円柱状のIP-CHAを挿入し、右下肢のみLIPUSを1日20分間照射した。LIPUS照射後2週間、3週間でそれぞれIP-CHAを回収し、Micro-CTにて新生骨の体積を測定した。その結果、LIPUS照射後3週においてはLIPUS群で新生骨の体積は有意に増加していた。次にLIPUSが新生骨形成を促進する機序を調べる目的で、MC3T3-E1細胞を用いて、Wound healing assayを行ったところ、LIPUS照射群では有意に細胞の遊走能が促進されていた。これらの結果よりLIPUSは骨欠損部に移植したIP-CHAに対して、新生骨形成を促進し、その機序の1つとして細胞の遊走能を促進している可能性が示唆された。
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Cytokine Growth Factor Rev., 16
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分子リウマチ 2
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