本年度は、ChIP(Chromatin Immuno-Precipitation)-CGH(comparative genomic hybridization)法の確立を目指して、ChIPおよび、CGHの条件設定を行った。ChIP-CGHの条件および精度を確認するため、滑膜肉腫細胞株SYO-1にヒストン脱アセチル化阻害剤FK228を投与し、ヒストンのアセチル化を誘導し、ChIP-CGH法で検出できるか検討した。 ChIPは、アセチル化ヒストンH3抗体(Cell Signaling社)を用い、ChIP-IT kit(Active Motif社)のプロトコールに準じて行った。ChIPの精度管理にはkit付属のpositive control、negative controlを用いてPCRにより行った。ChIPにより抽出できたDNA量は極めて少量であった。CGHには1μgのDNA量が必要なため、DOP-PCRによるDNAの増幅を行った。DOP-PCRはDOP-PCR master(Roche社)を用いて行った。CGHはChIPにより抽出したDNAをランダムプライマーによりCy3で標識し、リファレンスとしてChIP前のクロマチンより抽出したDNAを同様にCy5で標識した。標識したDNAを正常リンパ球由来メタファーゼ上で競合的にハイブリダイズさせ、蛍光顕微鏡で取り込みした。メタファーゼをCGH解析ソフトCW4000(Leica Microsystems社)で解析し、蛍光比1.2以上をgain(高アセチル化)、0.8以下をloss(低アセチル化)と判定した。 FK228処理前では、ほとんどの染色体領域はヒストン低アセチル化であったが、FK228処理後では、染色体の大半の領域が高アセチル化していた。 ChIP-CGHにより、SYO-1のFK228処理によるヒストンアセチル化の検出が可能であった。今後、ヒストンアセチル化だけでなく、メチル化やリン酸化といった他のクロマチン修飾因子についても解析を行っていく予定である。
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