研究概要 |
1,parabiosis modelを用いて骨髄由来末梢血中幹細胞の骨折治癒への関与について検討した。全身の組織が緑色に発光するGFP(Green Fluorescent Protein transgenic)マウスと同系統のマウスとの交配から生まれる同腹のGFPマウスおよびwild type (WT)マウスを得た。GFPマウスおよびWTマウスからそれぞれの末梢血を採取した。フローサイトメトリーを用いて末梢血中のGFP陽性細胞の比率を計測した。GFPマウス末梢血中のGFP陽性細胞は約61%であり、WTマウスでは約0.4%であった。さらにこれらのマウスを使ってparabiosis modelを作製すると、手術後2週時点でGFPマウスで39%,WTマウスで35%のGFP陽性細胞がそれぞれの末梢血を循環している(すなわち末梢循環を共有している)ことが確認できた。この時点で、WTマウスの右脛骨を骨折させ、独自に作製したリング型の創外固定器を用いて、骨折部を安定化させ骨折治癒を組織学的に観察した。骨折1、2週の時点で骨折部には仮骨形成を認め、仮骨は軟骨細胞、骨芽細胞から構成されているが、おそらく骨芽細胞と考えられる細胞の一部に抗GFP抗体陽性の細胞が同定された。これにより我々の作製した実験系でも末梢血を循環していた細胞が、骨折部に動員されていることを証明した。骨折後3週の時点では骨は修復されており、骨折部にGFP陽性細胞は同定されなかった。 2、骨折部に動員された末梢血由来の細胞が骨芽細胞であるかどうかを証明するために、骨芽細胞および骨細胞に特異的なマーカーである抗osteocalcin抗体を用いて免疫染色を行った。連続切片にてGFP陽性細胞の存在する部位の細胞はすべてosteocalcin陽性であり、骨折部に動員されたGFP陽性細胞は骨芽細胞であると考えられた。 今回の研究で骨髄由来末梢血循環幹細胞は、骨折治癒過程において骨芽細胞に分化し、骨折部に動員されると結論した。
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