研究概要 |
1.<刺激装置の作成> ラット尾椎に伸張刺激を与えるための刺激装置を作成した。コンピュータによるフィードバック制御により2つの固定治具間に一定の反復伸張力(約1Hz周期)を負荷することができた。生体ラット尾椎にステンレスワイヤを刺入して治具に固定することで尾椎への直達的な反復伸張ストレス刺激がin vivoで可能になった。 2.<プロトコールの決定および刺激実験> (1)まず中間部尾椎を対象とした。第7,10番尾椎にワイヤを刺入し第8,9番尾椎を観察対象とした。20ニュートン(20N)の牽引力,120サイクル/日,週5日刺激,3〜4週間継続のプロトコールにて刺激を行なった。実験後,X線,マイクロCT撮影上では観察対象尾椎において椎間部分付近の椎体周囲に,異所性骨化様陰影が観察された。組織学上では異所性骨組織の形成に加え,軟骨様細胞が旺盛に増殖している様子が観察された。免疫染色により,BMP-2の発現が軟骨様組織周囲に観察された。しかしながら,8,9番尾椎は単純な柱状の構造であるため前縦靭帯や後縦靭帯は判別しにくく,はたして脊柱靭帯自身の応答なのかは判断しづらかった。 (2)そのため第2の実験として,椎体と椎弓構造を伴い体幹の脊椎と構造が類似した近位側尾椎に対象を変更した。観察対象は第3〜5尾椎とした。10N,600サイクル/日,週5日,2週間のプロトコールにて刺激を行なった。ここではX線上では明らかな骨化様陰影は観察されなかったが,組織学的には前縦靭帯,後縦靭帯の構造がはっきりと確認され,靭帯付着部近傍における軟骨様細胞の発生・増殖が観察された。 3.<今後の課題> ラット尾椎への反復伸張ストレス負荷により,尾椎周辺組織に異所性の骨・軟骨様組織が形成されることがわかった。今後は刺激条件の違いによる靭帯の応答の変化や,BMP-2以外の種々のサイトカインの発現を検証してゆきたい。
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