研究概要 |
前年度に確立した方法に基づいて、家兎椎間板変性モデルおよび多血小板血漿(PRP)を作成した。PRPを予め調整した、ゼラチンハイドロゲル粒子に含浸させて変性椎間板内に投与した(PRP-粒子群)。対照群として、phosphate-buffered saline(PBS)含浸粒子を投与する群、PRPを粒子を用いず投与する群、および穿剌のみを行う群を作成し、それぞれ処置を行った。投与後経時的に椎間板組織を摘出して組織切片を作成し、HE染色、grading scoreによる評価、およびプロテオグリカン(PG)に対する免疫染色を行った。さらに、PRP含浸粒子投与後の髄核細胞の微細構造を電子顕微鏡で観察した。その結果、PRP一粒子群では髄核、線維輪共に変性の進行が抑制されたのに対し、他の群では変性の著しい進行を認めた。免疫染色では、PRP-粒子群でPGの濃染像を認めたが、他の群では染色性が乏しかった。また、PRP含浸粒子投与後の髄核細胞は、正常髄核細胞と構造上の相違を認めなかった。この結果から、PRP含浸ゼラチンハイドロゲル粒子の椎間板内投与は、変性椎間板に対する有効、簡便かつ安全な治療法となる可能性が示された。この研究成果を学術論文として報告した(Tissue Engineering,2007)。また、第35回日本脊椎脊髄病学会(平成18年4月21-22日、東京)、第32回骨カルシウム代謝研究会(平成18年9月22日、京都)、第25回日本運動器移植・再生医学研究会(平成18年9月23日、東京)、第21回日本整形外科学会基礎学術集会(平成18年10月19-20日、長崎)、53nd Annual Meeting of the Orthopaedic Research Society(February 11-14,2007,San-Diego)にて学術発表を行い、椎間板変性に対する新しい治療法として注目を集めた。
|