2量体の転写因子AP-1のサブユニットのひとつであるFra1を、体中の細胞で高発現するトランスジェニック(Tg)マウスは、著明な骨量増加を示す。すなわち、Fra1は重要な骨形成促進因子として知られている。この骨硬化症の発症時期を解明するため、昨年度は、麻酔下で実験小動物を撮影可能なX線CT装置LaTheta(Aloka)を利用し、経時的に脛骨骨密度を測定した。平成18年度は、その過程で明らかになった、3つの知見を掘り下げて解析した。 1.高解像度のマイクロCTによる解析:LaThetaの空間分解能は、60マイクロメータが限界であった。そこで、GE社のeXploreLocus(解像度27マイクロメータ)および、コムスキャンテクノ社のScanXmate(解像度5マイクロメータ)を用いて、生体ではなく摘出骨による解析を行った。その結果、生後一ヶ月後から組織学的に認められた骨量の増加は、骨形成のと共に、胎児期からすでに始まっていることが示された。 2.高解像度のCT解析により、皮質骨内の血管孔と思われる管腔構造の走行異常が見出された。この血管走行異常が骨に特異的か否かを明らかにするために、網膜の血管走行を解析したところ、Fra1 Tgマウスでは、網膜の血管走行にも異常が認められた。その理由はいまのところ分かっていない。 3.骨量増加が初期から起こることがわかったので、骨折治癒過程が促進しているかどうかを検討した。脛骨の横骨折モデルの解析から、予想に反して仮骨形成が遅延していることがわかり、また、炎症反応の低下が認められた。骨折後の炎症反応が、治癒過程の惹起に必要であることが示唆された。
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