電気生理学的記録による痛覚伝達の加齢による変化。 1、in vivoパッチクランプ記録による結果 脊髄後角第二層神経細胞からホールセルパッチクランプ記録を行い、自発性活動や後肢刺激にて誘起される反応を観察した。若年成熟ラット(Adult)では膜電位を-70mVに固定すると自発性の興奮性シナプス電流(EPSC)が観察された。後肢をピンセットでつまむ機械刺激するとつまんだ力に比例してEPSC振幅と頻度の増加が観察された。 老齢ラット(Aged)では、後肢機械刺激によるEPSC発生頻度が、Adultのそれに比して弱い力でEPSC振幅と頻度増加が認められた。すなわち、機械刺激の刺激閾値がAgedの群で低下している可能性が考えられた。それぞれ記録細胞数がまだ少ないため統計的有意差を出すに至っていない。 2、In vitroパッチクランプ記録による結果 上記により観察された老齢ラットでの機械刺激反応閾値低下が、どのような脊髄内での感覚伝達機構の変化により惹起されたものかを解析するため、若年成熟ラット(Adult)および老齢ラット(Aged)から、末梢からの刺激に相当する脊髄への入力を目的として、後根付き脊髄横断スライス標本を作成した。後根に付加する電気刺激強度を変化させることにより、非侵害性刺激から侵害刺激に相当する電気刺激を、記録細胞に付加する様にした。 Adultでは、ホールセルパッチクランプ法で記録したところ、膜電位-70mV固定下に自発性EPSCが観察された。in vivoで後肢をピンセットでつまむ機械刺激に相当する電気刺激を脊髄後根に付加すると、末梢神経Aδ線維が興奮すると思われる刺激で、刺激誘起EPSC発生が観察された。電気刺激強度を漸増すると、刺激誘起EPSC振幅と持続時間の増加が観察された。 一方、Agedでは、末梢神経Aδ線維興奮閾値より弱い刺激で、刺激誘起EPSCの発生が観察された。電気刺激強度を漸増すると、刺激誘起EPSC振幅と持続時間の増加が観察されたが、Adultでの反応との比較では、反応閾値の低下と刺激反応相関がAgedの場合はAdultに比べ急激である可能性が想定された。
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