平成19年度は、膜電位イメージング法による動画像としての計測と、電気生理学的膜電位記録を並行して行なった。 動画像解析において、外液還流により投与したプロポフォールは、第4頸髄前根(C4)の吸息性バーストの発生頻度を減少させた。プロポフォールはC4のバースト発生に先立つ時期、すなわち前吸息相に、吻側腹外側延髄で脱分極する呼吸性ニューロン(吸息先行型ニューロン)群の脱分極を有意に減少させた。しかし、C4のバースト発生と一致する時期、すなわち吸息相に、吻側および尾側の腹外側延髄で脱分極する呼吸性ニューロン(吸息性ニューロン)群の活動を抑制しなかった。GABA-A受容体拮抗薬ビククリンにより、前吸息相における吻側腹外側延髄の呼吸性ニューロン群の脱分極は有意に回復したが、別のGABA-A受容体拮抗薬ギャバジンにでは有意な回復を示さなかった。 電気生理学的には、パッチクランプ法による膜電位測定の結果、プロポフォールにより吸息先行型ニューロンでは静止膜電位が過分極し、バーストの発生頻度が抑制された。次いで、抑制性シナプス後電位の影響を除くため、テトロドトキシンによる神経伝達遮断下にプロポフォールを外液灌流で投与した。この場合にも同様に、吸息先行型ニューロンの静止膜電位が過分極し、膜抵抗については有意な変化は観察されなかった。 以上の観察結果から、プロポフォールは、吸息先行型ニューロンにtonicに作用し、静止膜電位を過分極させ、その興奮を抑制していることが示唆された。 今年度導入した顕微鏡用デジタルカメラシステムにより、電気生理学的手法で記録したニューロンの組織学的検討を開始した。今後も順次解析を行なっていく予定である。
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