研究概要 |
【目的】PSAは、現在前立腺癌の早期発見・早期診断に有用なマーカーであるが、特異性の問題があり、悪性度を反映しない上、スクリーニングとして最も大切な感度自体にも問題が提起されており、新たなマーカーの開発が必要とされている。われわれは最近、糖鎖研究の過程でRM2抗原(β1,4-GalNAc-disialyl Lc4)が前立腺癌に発現していることを報告した。この報告の中で、モロクロナール抗体RM2による免疫染色にて前立腺癌細胞の他、間質にも反応が認められたことから、モロクロナール抗体RM2が認識するRM2抗原がsheddingされ、血清中に放出される可能性が示唆された。そこで、前立腺癌患者血清中のRM2抗原の発現を研究することを目的とした。 【方法】2004年6月-2005年2月の間に前立腺生検を施行され組織学的診断が得られた中で、血清PSAレベル10ng/mL未満の症例から無作為に前立腺癌および良性前立腺症例の血清を選択し、モロクロナール抗体RM2によるウエスタンブロッティングを施行した。対象症例は前立腺癌29例、良性前立腺13例となった。 【結果】背景因子では、年齢は前立腺癌69.2±6.2歳、良性前立腺67.1±2.1歳(p=0.29)。血清PSAレベルは、前立腺癌5.07±0.32ng/mL、良性前立腺5.14±0.53ng/mL(p=0.90)。前立腺癌のbiopsy Gleason scoreは、6が3例、7が21例、8が3例、9が2例であった。 RM2による前立腺癌と良性前立腺の血清に対する反応の違いは、40-45kDaに位置するバンドの反応の差として観察された。RM2による当該糖蛋白の反応は、中等度以上陽性(++)、軽度陽性(+)、陰性:equivocal(±)と反応なし(-)、3段階に分類した。前立腺癌29例中、中等度以上陽性27例、軽度陽性1例、陰性1例であり、良性前立腺13例中、中等度以上陽性0例、軽度陽性4例、陰性9例であった。中等度以上陽性をテスト陽性と設定すると、前立腺癌検出におけるRM2抗原測定の感度は、93.1%(27/29)で特異度は100%(13/13)であった。 【結論】血清中40-45kDa糖蛋白上のRM2抗原は、血清PSAレベル10ng/mL未満における前立腺癌検出に高い感度と特異度を有し、血清RM2抗原の早期前立腺癌診断における有用性が示唆された。現在、当該糖蛋白を解析中である
|