研究概要 |
増殖性疾患である前立腺肥大と前立腺癌との増殖制御機構の違いに関しては未だ十分な理解がなされていない。申請者らはこの原因となる候補遺伝子として細胞周期の負の制御因子である14-3-3σを同定した。14-3-3σの発現は前立腺肥大においては亢進しているが、前立腺癌ではその発現が激減し、その発現量は蛋白分解やDNAメチル化などで制御されていることを申請者らは見出している。14-3-3σはサイクリンB1を核内から細胞質に移動させて増殖抑制を行っていることが培養細胞の実験で示されてきたが実際にヒト組織におけるこれらの関連については不明であった。申請者らはヒト乳癌組織での細胞周期制御因子の免疫染色を行った結果、細胞質にあるサイクリンB1と14-3-3σの発現量は強く相関し、逆に核内に存在するサイクリンB1の発現量が多い時には予後不良となることを見出した(Cancer Sci.,in press)。また申請者らは、14-3-3σの蛋白分解酵素としてEfpを発見している。申請者らはEfpの新たな機能を探索し、EfpがRIG-Iのユビキチン化を行うことでNFκBシグナルやインターフェロン産生を制御することを発見した(Nature 446,916-921)。したがって、Efpと14-3-3σを中心としたユビキチン化や蛋白分解を介したネットワークが前立腺疾患における増殖制御を行っている可能性がある。さらに、申請者らは前立腺癌においてアンドロゲン刺激によりアンドロゲン受容体がヒト遺伝子上のどの位置に結合するかを網羅的に探索し報告した(Oncogene, in press)。また、アンドロゲン依存性の細胞増殖を規定する因子としてCyp2B6を(Prostate, in press)、さらに前立腺癌の予後規定因子としてERRαを見出した(Int.J.Cancer 120,2325-2330)。
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