研究概要 |
癌スクリーニングシステムには高い正確性(診断精度),簡便性,迅速性,および非侵襲性等,が要求される.我々はこれらの条件に合致したバイオ診断チップの開発をすすめており,本年度の進捗状況は以下の通りである. 1.従来のイムノクロマトセンサーに既存抗体を配置したチップを作成し,金ナノ粒子,クロマト担体材料などの選別,最適化を検討した.さらに,マイクロビース配置型やクロマト機能材料配置型に基づいた複数の抗体マーカーが配置可能なマルチ型イムノセンサーの構造を検討していく予定である. 2.マイクロ流体チップ技術と分離素材技術を連携させ,サンプルに混在するセンサー阻害物質除去能と微量サンプル濃縮能を有する試料前処理チップを作製した. 3.発色,蛍光,電極法等のデバイズを用いてマイクロリットルレベルでの微量採血でも診断が可能な高感度測定デバイスを設計し,デバイスの小型化にも取り組んだ. 4.設計試作した各種センサーの特性を,1)センサー応答の評価,2)前処置条件の検討及びチップ作成,3)サンプリング及び導入装置,4)測定デバイスと小型化の検討,等の観点から再検討し,低侵襲型診断システムの最適化を検討した. 5.固相として塗布している抗体溶液中に金コロイド修飾抗体を混ぜることによって,抗原測定時に僅かな抗原捕捉金コロイド修飾2次抗体しかない場合(抗原濃度が薄い)でも固相側の金コロイドによって発色を増強する方法(金コロイド修飾抗体入り固相化抗体塗布法)を開発し,テストストリップの高感度化が可能になった。 6.金コロイド修飾抗体入り固相化抗体塗布法を用いて,血清total-PSA値2ng/mlを検出目標としたテストストリップを検討する予定である.また,pro-PSAが前立腺癌の新規マーカーとなりうるかを検討すべく,まずペプチド合成を行いpro-PSAのポリクローナル抗体を作製する予定である.
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