研究概要 |
[背景]臓器移植において免疫寛容を導入しようとする試みはこれまでも存在し、その多くは特定の特殊な遺伝子、蛋白などをレシピエントに投与するものであった。腸管の粘膜免疫機構により誘導されたドナー臓器特異的免疫寛容がレシピエントで有効に機能する可能性が、最近注目されつつある。我々はラット同種移植モデルを用いて、移植するドナーの臓器をあらかじめレシピエントに経口摂取させることによる移植臓器への経口免疫寛容導入を試みた。 [方法]Fisher344ラットをドナー、Lewisラットをレシピエントとした。コントロール群:Lewisラットの右腎を摘除し、Fisher344ラットから採取した右腎を同所性に顕微鏡下に移植した。急性拒絶反応の予防に低容量のシクロスポリン1mg/kg/dayを術後10日間Lewisラットに投与した。Lewisラットの左腎は腎移植後5日目に摘出した。経口免疫寛容導入群:腎移植前14日目から5日目までドナーとなるFisher344ラットから採取した腎臓を液状にホモジネートして200mg/dayずつLewisラットに経口投与した。その後はコントロール群と同様に検討した。術後連日ラットを観察し、体重測定、生存日数をまず検討した。 [結果]生存日数 コントロール群 9,10,30,62,>60,>60 経口免疫寛容導入群 10,10,42,>60,>60,>60 [考察]このモデルではコントロール群においては慢性移植腎症のため徐々に腎不全が進行し、経時的にラットは死亡する。経口免疫寛容を試みた経口免疫寛容導入群では生存日数が延長すると期待されたが、やや延長傾向を認めたのみで明らかな治療効果を認めなかった。 [平成18年度の検討]・投与抗原であるF344ラットの腎臓の量や投与時期の再検討。 ・術後早期の免疫抑制剤を増量する検討。 ・皮膚移槙や心移植など多臓器移植モデルにおける検討。を予定している。
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