研究概要 |
加齢による配偶子形成過程の変化により,生殖障害メカニズムを解明することを目的として,(1)ドキソルビシンの低容量長期間投与方法で造精機能障害モデルマウスを作成した.精細胞分化において必須のc-kit m-RNAの発現と,細胞の増殖能に関わっていると考えられるテロメラーゼ活性,およびアポトーシス核の検出と解析を行い,配偶子形成過程の各段階で障害メカニズムの解明を目指した.また,男性不妊治療においてその効果が臨床的に確認されている漢方薬,および緑茶カテキンを用いて造成機能障害のレスキユーについての考察を行なうことにより,造成機能障害のメカニズムについての解明とその予防的治療についての検討を行なった.(2)卵子の加齢変化による受精障害について,細胞障害により遺伝子変異が生じ易く,かつヘテロプラズミーとして存在することが知られているミトコンドリアDNA(mt-DNA)の変化についてpreliminaryに実験を行なった.初期胚のmt-DNAのコピー数の量的会析を行ない,また遺伝子点変異をターゲットに質的分析を行なうことによって,生殖障害とmt-DNAの関係について考察を行なった. (1)の結果として,c-kit免疫組織染色とRT-PCR法によるc-kit mRNAの発現は,両者ともDXR投与での発現の減弱を認めるが,漢方薬併用・カテキン併用にて造精機能障害のレスキューを行なうことによってその発現の増強を認めた,また,漢方薬・カテキン投与により精細胞のアポトーシスの抑制および,テロメラーゼ活性の増加を確認した.テロメラーゼ活性の局在を検討した免疫染色の解析では,spermatogoniaでのテロメラーゼ活性が最も強いことを確認した,(2)の卵子におけるmt-DNAの解析では,初期胚の発生形態分類上,良好なものにmt-DNAコピー数の多い傾向があることが示唆される結果が得られた.
|