研究概要 |
(1)子宮内胎児発育遅延(IUGR)の病態を遺伝子レベルで解明するために二絨毛膜性Discordant twinの胎盤を用いてcDNAマイクロアレイ解析を行い、IUGR胎盤の9121遺伝子の発現プロフィールを検索した。その結果、IUGR胎盤においてIGFBP1とFollistatin like 3遺伝子の発現がAGA胎盤のそれに比較し、20.7倍、13.1倍と有意に高かった。単胎IUGR症例胎盤4例およびAGA症例胎盤4症例のIGFBP1,Follistatin like 3両遺伝子発現をRT-PCR法で検索した結果、IGFBP1遺伝子の発現はすべてのIUGR胎盤に認められたが、AGA胎盤2症例で消失、ほかの2症例では減弱していた。Follistatin like 3遺伝子の発現はすべてのIUGR胎盤に認められたが、すべてのAGA胎盤で減弱していた。以上よりIUGRの発生機序にIGFBP1とFollistatin like 3が重要な役割を果たす可能性が示唆された。 (2)産科疾患のメカニズムを解明するためにはヒト正常絨毛上皮不死化細胞株を樹立が必須であるため、インフォームドコンセントを得た人工妊娠中絶症例(妊娠7週)の絨毛組織を培養液内でリンスし、遠心、洗浄を行った後、コラーゲンコートディッシュで培養、クローニングし、E6/E7/hTERT遺伝子を導入し、細胞株を樹立した。免疫細胞的検討により、hCGβ陽性、サイトケラチン8,18陽性、インヒビンα陽性の合胞体栄養細胞の特徴を有する不死化細胞株であり、現在90継代以上増殖を続けている。染色体解析では正常核型を示し、ヌードマウス皮下接種後3ヶ月以上腫瘍形成は認められていない。われわれが樹立した正常の性質に近いヒト正常絨毛上皮不死化細胞株は生理機能解析,薬のターゲット探索,薬の毒性評価など様々な方面の研究に応用可能である。
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