研究課題
生体内における網膜幹細胞ニッチを検討するために胎生14日から生後10日マウスにBrdUを取り込ませ数ヵ月後に毛様体におけるBrdU陽性細胞を観察するBrdU希釈法を用いて網膜幹細胞の同定を試みた。この方法でBrdU陽性細胞が毛様体部に認められ、これらが網膜幹細胞であることが推測された。しかしnestinなどの未分化マーカーと共陽性にはならず、SSEA-1などの表面抗原も同定するに至らなかった。したがって幹細胞を維持するニッチの環境の詳細は不明であったが、ニッチによる高効率培養のモデルとして液性因子と細胞外基質を検索し、自己複製・多分化能の検証を行った。過去の報告にしたがってマウス毛様体由来の成体網膜幹細胞をスフェア法によって単離し、得られたスフェアを分散して単層培養を行った。Wnt3a(R&D)を培地に添加することで細胞増殖マーカーであるKi-67陽性細胞は約4倍に、BrdUの取り込み率も約2倍になった。さらにFGF2(R&D)を同時に添加することでKi-67陽性細胞は約7倍となり、高効率な培養を確立できた。この細胞の未分化性を確かめるために単層培養の細胞を継代し再度スフェア法によって培養したところ、一部の細胞は2次スフェアまで形成可能であり、未分化性が維持されていることが示唆された。細胞外基質としての培養皿のコーティングについてはフィブロネクチンとオルニチンによってコーティングしたものが適当であった。また単離した網膜幹細胞を分化誘導条件下で培養したところ、複数の網膜細胞マーカーを発現する細胞が出現したことから多分化能を維持していることが確認された。分化誘導のための細胞外基質としてはラミニンによってコーティングされた培養皿を用いることで効率よく分化を誘導できた。本研究の結果、ニッチのモデルとしての液性因子と細胞外基質を同定し、網膜幹細胞の高効率培養を確立することができた。
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