研究概要 |
本年度は、超音波を用いた遺伝子導入の効率を上げる為に研究を行ない大きな成果が得られた。超音波とマイクロバブルを用いる方法は、一定の遺伝子導入効果を得られるが(Sonoda S, et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci,2006)、治療に用いることができるほどは良くない。その原因を探求したところ、マイクロバブルの生物学的不安定性によることが判った。マイクロバブルは、血清により極めて急速に不安定化されるために遺伝子導入そのものが不確実になる。そこで、新しい遺伝子導入アジュバンドとして、バブルリポゾームを開発した。これは、リポゾームにポリエチレングリコールを加えることで、血清の影響をほとんどなくす事ができるという特徴がある。また、C3F8ガスを混入することで、キャビテーション効果を最大に上げることができる。このバブルリポゾームと超音波を用いて、培養ラビット角膜上皮細胞ならびにラット結膜組織に遺伝子導入することが可能であった(従来法と比較して約2倍)。超音波を用いた薬物送達の問題として、曝露組織の温度上昇による組織障害が考えられる。そこで、超音波による眼球組織への影響を、表面温度測定、機能検査、組織検査を行なって評価した。その結果、眼球に障害を与えない条件下で遺伝子導入を完成することが可能であった。今回開発したバブルリポゾームによる遺伝子導入は、構成物が全て既に臨床医学で使われているものであり、安全性に関する懸念はきわめて低い。また、この技術は特許申請している。以上のことから、わが国が開発した、臨床応用可能な遺伝子導入法の開発のために、極めて重要な一歩を踏み出すことができたと考える。
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