【目的】胆道開鎖症の総胆管の内腔は肥厚し、肉眼的には閉塞しているが、肥厚線維化した胆管上皮細胞が増殖能を有するのか、また、正常な胆管上皮細胞と比べて変化していないかどうかについて検討した。 【方法】胆道閉鎖症3例に対し、手術中に採取した肝外胆道索状物組織を採取後直ちにHanks液(pH7.2)に浮遊、洗浄して1mm以下の砕片とし、4型collagenでcoatingした35mm培養皿に静置して10%Nuserumを含んだDulbecco's modified Eagle medium(DMFM)とHamF-12mediumにepidermal growth factorとinsulin、forskolinを添加した培養液で、37℃に保たれたCO2インキュベーターでprimary cultureを行った。隔日に培養液を交換し、primary culture後20日目に胆管上皮細胞がコロニーを形成している部分のコラーゲンを切離して1型コラーゲンでcoatingした培養皿に単層培養した。継代後7日目にcytokeratin 7(CK7)抗体で免疫細胞化学染色を行い、CK7陽性細胞の形態を観察してコロニーが何個存在するかカウントした。 【結果】全例から胆管上皮様の細胞が出現し、コロニーを形成した。コロニー数は3例に差はなく、400倍視野で平均1.2±0.07群であった。胆管上皮様の細胞はCK7抗体による免疫細胞染色で陽性となり、この細胞が胆管上皮であることが示された。また、継代した細胞は位相差顕微鏡による形態観察で胆管上皮細胞であった。 【総括】1.胆道閉鎖症の肝外胆道索状物から胆管上皮細胞が培養でき、培養された上皮細胞は継代を3回繰り返した後も増殖能が保たれている正常細胞であった。 2.培養した胆管上皮細胞はCK7陽性細胞であり、胆道閉鎖症は何らかの外因により胆管の構造が破壊されたものであると考えられた。
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