陰圧閉鎖療法は、血管新生を促すことで創傷治癒を促進する効果がある。われわれは、本法を皮弁移植に応用することで、血管吻合を用いない新しい皮弁移植法の開発に取り組んでいる。 本年度の研究目的は、1)血管吻合を用いない薄い遊離皮弁の生着率と組織の解析、である。ラヅトの背中に小皮膚欠損を作成し、それぞれ厚みの異なる薄い皮弁を鼡径部及び背部より採取し、顕微鏡下での血管吻合を用いないで欠損部に移植した。移植直後より陰圧閉鎖療法を開始し1週間の経過観察を行った。鼡径部の皮弁(厚み1mm)は全症例において生着することに成功した。それに対し、背部の皮弁(厚み3mm)は全症例において壊死した。 鼡径部の皮弁は、血管吻合を行わない群では全壊死することが確かめられており、本実験の結果から陰圧閉鎖療法システムが皮弁の生着に関与していることが推測される。しかし、皮弁の生着には限界があり、厚みが3mmを超える背部の皮弁が生着することはなかった。移植床からの新生血管が皮弁下層より進入するも、皮弁の生首の成否が決まる1週間の間に皮弁上層まで及ばなかったためと考えられる。今後は、本法を用いた皮弁の生着のメカニズムの解析と、より効果的な陰圧閉鎖療法システムの開発が望まれる。
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