研究課題/領域番号 |
17659562
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
安楽 邦明 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (60380846)
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研究分担者 |
秋田 定伯 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (90315250)
平野 明喜 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (90208835)
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キーワード | スカーレス・ウーンド・ヒーリング / 瘢痕性状 / 臨床評価 / 非ヒト霊長類 / ドレッシング材 / 皮膚角質水分計 |
研究概要 |
スカーレス・ウーンド・ヒーリング(瘢痕なき創傷治癒)は、ほ乳類では妊娠中期以降の胎児及び出生後は不可能である。今回、スカーレス・ウーンド・ヒーリングの臨床モデルとして、熱傷創の肥厚性瘢痕への移行の解析、特に分層採皮部の瘢痕(最低1年の経過観察)程度の観察、臨床評価、客観評価と、臨床的に治療判断に困難な場合のおおい小児II度熱傷創への早期での塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor, bFGF)投与による瘢痕の評価(最低1年の観察期間)を臨床指標と共に実施した。中間分層採皮部での瘢痕の性状は、採皮直後の臨床的な指標(疼痛、浸出液量、創傷治癒までの日数、ドレッシング材の交換回数)および経皮的水分損失量、皮膚バリア機能をポリウレタンフォーム材とハイドロジェル材で検討した所、創傷治癒までの日数、浸出液量、材料交換回数でポリウレタンフォーム材が優れ、疼痛度ではハイドロジェル材が優れていた。経皮水分損失量は術後1年で対照正常皮膚と同程度となり、ポリウレタンフォームドレッシング材は臨床評価及び角質水分計測計での諸データで優れていた。また、小児II度熱傷への早期bFGF投与にて、肥厚性瘢痕への進展程度は低下し、皮膚角質水分状態も改善した。非ヒト霊長類(カニクイサル)を用いて、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)投与実験では、ヒト-サル間の異種移植となり、免疫抑制剤(FK-506)の持続投与にも関わらず大部分は局所炎症(免疫拒絶)が高度となり、移植直後の客観的評価は困難となった。一部、免疫抑制状態が得られたものにおける移植細胞生着では、瘢痕の幅、盛り上がり、高度、色調はbFGF投与創で優れていた。また瘢痕硬度も有意に柔らかった。 以上から、非ヒト霊長類モデルは免疫性の克服が重要であるものの、間葉系幹細胞により瘢痕性状の調節可能であり、これまでの臨床知見を更に改善する可能性があるものと考えられた。
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