研究概要 |
マウス口腔粘膜扁平上皮増殖中心細胞の同定とその発現遺伝子の特定:4週齢ICR系マウス腹腔にBrdUを投与して、パラフィン切片を作製し、BrdU取り込み細胞を同定した。その結果、マウス口腔粘膜では、BrdU陽性細胞は上皮基底層第一・二層に分布し、ヒト粘膜とは必ずしも対応しない分布であることが判明した。 (1)マウス口腔粘膜上皮胚細胞の試験管内分化誘導:前項までに確立したマウス口腔粘膜より扁平上皮胚細胞集団を分離し、試験管内にそれらの胚細胞を単層培養して、分化誘導実験の条件検討を試みたが、細胞維持が困難なために実験系のデザインを検討中である。 (2)ヒト口腔粘膜異型上皮と上皮内癌における基底細胞分化抗原の免疫組織学的確認:前年度までに確定された増殖細胞抗原として有用なマーカKi-67のほかに、ケラチン分子種のうち、CK13,17,10,16,19、さらに角質分化関連分子のうち、インヴォルクリン、フィラグリン、機能は不明ながらポドプラニンの有用性をヒト口腔粘膜境界病変で免疫組織学的に確認した。とくにCK13消失とCK17出現の対応はもっとも重要な所見と評価された。 (3)総括:以上より、扁平上皮杯細胞の所在は基底部であることは想定されるが、第一層であるのか第二層であるのかを特定することはなお困難である。しかし、異型細胞が生じて上皮内癌に向かう過程では、基底第二層に増殖中心があることは判明し、角化あるいは基底細胞分化経路に未だ入らない細胞群の存在は確認できた。したがって、少なくともがん幹細胞は上皮基底第二層に存在するという概念を固めることができた。
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