歯の再生研究が注目されているが、現状では歯胚由来の細胞が必須であり、対象となる細胞の確保が困難である.一方体性幹細胞である間葉系幹細胞を用いて歯胚を構成する細胞への分化誘導が可能となれば、研究のみでなく将来の歯の再生への重要なステップとなる.本研究は、骨髄由来の間葉系幹細胞(MSC)を用いて、歯胚を構成する中心的な細胞である象牙芽細胞への分化の可能性を検討するものである.Macrophage Inflammatory Protein3α(MIP-3α)はMacrophageの遊走、樹状細胞の活性化、リンパ球間のシグナル伝達に関与する免疫関連因子であり、骨組織における炎症部位の修復に関与することが知られているが、近年ヒト歯髄細胞において、Dentin sialophosphoprotein(DSPP)を強発現させることが報告された。あらかじめ骨形成性細胞への分化誘導を行ったMSCにこのMIP-3αを作用させることにより、象牙芽細胞のマーカー遺伝子の一つであるDSPPの発現を誘導できる.Western blottingの結果からは、蛋白レベルでもDSPの強発現が確認された。しかしながら、これらの結果は単一の(一人のドナー由来の)細胞源の結果であった。したがって、平成18年度にはこの現象が他の細胞(他のドナー由来の細胞)を用いても再現性があるかどうかの検証を行った。これまでの18歳男性由来のMSCに加えて、20歳男性、23歳女性2名の計4名の細胞を用いて、同様の検討を行なった。用いたすべての細胞で、MIP3-αを加えることでDSPPの発現が確認され、この現象が再現性のあるものと考えられた。なお、20歳男性由来の細胞では、Dexのみの刺激でもDSPPを発現していたが、これは細胞による個体差と考えられた。本年度は、これまでの結果を論文として投稿し、受理されている。
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