研究概要 |
PC-1はヌクレオシド3リン酸からピロリン酸をつくる膜結合性酵素で,PC-1によって合成されたピロリン酸は石灰化を阻害することが知られている。我々は,PC-1変異マウス(TTW)の歯周組織を観察した結果,非常に高度なセメント質肥厚を認め,セメント質形成におけるPC-1の関与を世界ではじめて報告した。そこで本研究では,セメント芽細胞や歯根膜細胞の増殖分化におけるPC-1の役割を明らかにするとともに,PC-1を標的にしたセメント質再生療法を開発できるかどうかを検討することとした。申請書にある計画にそって研究を遂行した結果,本年度は以下の成果を得た。 1.PC-1変異マウスならびに野生型マウスから歯牙を抜去し,歯根に付着した歯根膜から得られた細胞の特性を明らかにした。その結果,形態学的にTTWマウス由来細胞(PC-1 mutant)は野生型マウス由来細胞(PC-1 wild)に比較して立方型形状を示す傾向がみられた。石灰化関連タンパクの発現については,PC-1 mutantがPC-1 wildに比べて,明らかに高いアルカリフォスファターゼ活性や骨シアロ蛋白のmRNA発現を示したが,オステオポンチン,オステオカルシンの発現はPC-1 mutantとPC-1 wildに明らかな差はみられなかった。 2.PC-1 wildならびにPC-1 mutantにPC-1あるいはPC-1 siRNAを導入し,その増殖分化に対する影響を検討したが,lipofectionを用いたシステムではうまく導入できなかった。現在,virus vectorを用いた導入を検討中である。 本年度の検討により,PC-1 wildとPC-1 mutantの細胞培養に成功し,その特性を明らかにすることができた。
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