研究概要 |
骨および歯におけるSOSTの役割を調べるため,発生初期段階からのSOSTの発現をマウスの骨および歯胚を用いて,免疫組織化学的手法により検索した.また,骨の発生に関与すると考えられているSmad4やRUNX2などに関しても同様に検索した.SOSTの抗体は市販されていないため,合成ペプチドを用いて,SOSTのペプチド抗体を作成した.その作成した抗体をwestern blottingで確認したところ,65kにバンドが確認された.この抗体を用いて,SOSTの局在を検索した. 歯槽骨でのSOSTは,細胞が凝集し骨のベースが形成される段階である胎生14日目では,どの細胞にも発現は認められなかったが,胎生17日目の骨組織において,骨周囲に存在する骨芽細胞にSOSTの発現が認められた.特に骨表面に近い骨細胞,すなわち幼弱な骨細胞に強い発現が見られた.BMP signalingに関与するSmad4は,SOSTと同様な局在を示した.また,骨組織の発生に関与するRUNX2は,胎生期には局在は認められず,生後1日目より,骨組織周囲の骨芽細胞や前駆骨芽細胞に認められた.一方,臼歯では,胎生期のエナメル器,歯乳頭,歯小嚢にSOST陽性の細胞は見られなかった.生後1日目になると,象牙芽細胞およびエナメル芽細胞にSOSTの局在が観察された.しかし,切歯では臼歯と同様に象牙芽細胞とエナメル芽細胞にSOSTの局在が認められたが,形成部であるアピカルバットに近い部位では陰性であり,切歯先端になるにつれて,象牙芽細胞とエナメル芽細胞の局在が強くなった.これらの結果は,SOSTは成熟した硬組織に発現することが示唆された.
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