研究課題
研究のまとめを行う目的で以下の実験を行った。前年の研究より小ペプチドWP9QYがRANK-RANKLの相互作用を変化させること、さらにその相互作用の変化はligand-受容体複合体の構造変化により生じることが明らかにされたので、WP9QYの破骨細胞形成系におけるin vitro作用の解明を行った。マウス骨髄細胞をsRANKL(可溶性RANKL)とM-CSFにて刺激すると酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRAP)陽性多核細胞(破骨細胞様細胞:OCL)が出現するが、このTRAP(+)OCLの生成をWP9QYは抑制した。一方、RANK-RANKL相互作用により起こる情報伝達シグナルの活性化として、NF-κBの核移行、NFATclメッセージ、Erk、Jun、Aktのリン酸化をWP9QYは抑制した。さらに骨髄より取り出した単離破骨細胞による骨吸収窩形成において、sRANKLによる吸収窩面積と深さの増大をWP9QYは抑制した。以上の実験結果より構分子生物学的手法を用いて設計したTNF受容アンタゴニストであるWP9QYペプチドはTNFファミリーであるRANKLにおいてもアンタゴニストとして機能し、その作用はRANK-RANKL複合体形成による細胞内情報伝達系の抑制効果により、破骨細胞の分化・増殖・骨吸収機能を阻害することが示された。今後このような小分子ペプチドは骨吸収抑制を示す薬物開発の一つのひな型となると考えられた。
すべて 2006
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The Journal of Clinical Investigation 116 (6)
ページ: 1525-1534