研究課題
[背景]硬組織の恒常性維持には、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収のバランスが重要である。一方、骨腫瘍、関節リウマチ、歯周病などの骨量減少病態においては、破骨細胞性の骨吸収が過剰であることが示されている。骨破壊病変部における骨吸収量は、破骨細胞数と単位破骨細胞あたりの骨吸収活性と強い相関をもち、また破骨細胞数は単位時間あたりに分化する細胞と、細胞死する細胞の比率に依存する。この観点から、破骨細胞の寿命に関する分子メカモズムを明らかにすることは、骨破壊病理の解明に重要である。[初年度の解析]1、炎症性サイトカインによる破骨細胞の遺伝子発現変動解析。炎症環境下では破骨細胞がアポトーシス耐性になるということが報告されているため、作業仮説として、炎症性サイトカインの持続的な影響がアポトーシス抵抗性を説明するのではないかと想定し、これらのサイトカインがどのような経路を介してアポトーシス抵抗性を賦与するのかを明らかにするため、トランスクリプトーム解析を行った。現在、炎症性サイトカイン存在下で大きく発現変動した遺伝子の、破骨細胞寿命への関与を検討中である。2、遺伝子欠損動物を用いた解析。アポトーシス関連因子であるBimは、血清やM-CSF除去時の破骨細胞死に関与する。しかし生理的・病的条件下での細胞死への関与については未知である。そこでBimおよび同じくBH3 only familyに属するNoxa、Puma、並びにアポトーシスと関係深いp53を複合的に遺伝子欠損するマウスの作製を行った。現在、個体レベルでの骨形態計測と、上記因子を欠損する細胞のin vitro解析を進めている。現在は途中段階にあるが、上記の検討によって、いかなる因子が破骨細胞の寿命を担うのかを詳らかにできると考えられる。
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