本年度はミクログリア/マクロファージに特異的に発現するリソソーム性システインプロテアーゼであるカテプシンSの顔面神経軸索切断に伴うミクログリアの反応における役割についてカテプシンS欠損マウスを用いて検討した。顔面神経軸索切断4日後、野生型マウスではミクログリアは顔面神経運動ニューロンの細胞体を取り囲むことが観察されが、カテプシンS欠損マウスではミクログリアの顔面神経核への集積は認められたが顔面神経運動ニューロンの細胞体を取り囲む像は認められなかった。カテプシンS、カテプシンB、ならびにシスタチンCの動態をmRNSならびにタンパク質レベルで解析した結果、野生型マウスではカテプシンSならびにシスタチンCは軸索切断側の顔面神経運動ニューロンの細胞体を取り囲んだミクログリアにおいて増大したがカテプシンBには有意な変化は生じなかった。一方、カテプシンS欠損マウスではカテプシンBならびにシスタチンCが軸索切断側の顔面神経運動ニューロンの細胞体を取り囲んだミクログリアにおいて増大した。次に野生型ならびにカテプシンS欠損マウスの大脳皮質より調整した初代培養ミクログリアを用いて接着能について解析した結果、カテプシンS欠損マウスから調整したミクログリアは野生型マウスから調整したミクログリアgに比較してフイブロネクチンへの接着力が有意に低下していることが明らかとなった。さらに軸索切断30日後、カテプシンS欠損マウスでは野生型マウスに比べて軸索切断側の顔面神経運動ニューロン数が有意に少ないことが明らかとなった。以上の結果より、カテプシンSはミクログリアが軸索を切断された顔面神経運動ニューロンの表面に接着に必須であることが示された。さらに、このミクログリアの接着は軸索を切断された顔面神経運動ニューロンの生存ならびに軸索再生において重要な役割を果たしていることが強く示唆された。
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