研究課題
味覚は食物中に含まれる化学物質が生理的に必要な物質かどうかの認知や摂食の判断に重要な情報を脳に伝え、生体の恒常性維持に重要な役割を果たしている。一方、ヒトの肥満や高脂血症をもたらす食調節系の異常は、通常野生動物では考えられない生理的調節系の制御範囲をこえる極めて強い食への嗜好性や嗜癖性によりもたらされているものと考えられる。本研究では、マリファナに含まれ摂食促進作用を持つカンナビノイドの味細胞における受容体の発現、味応答の修飾効果について、正常あるいは肥満マウスを用い調べ、末梢味覚器からの情報による食嗜好性の形成・調節のメカニズムについて検索する。本年度は正常マウスを用いて検索した。正常系C57BLマウスを用い、舌前部に分布する茸状乳頭及び舌後部の有郭乳頭の味蕾味細胞におけるカンナビノイド受容体CB1及びCB2mRNAの発現についてRT-PCR法とIn situ hybridization法をにより検索したところ、それらの発現が示唆される結果がえられた。次に舌前部の味蕾を支配する鼓索神経の甘味(糖、アミノ酸、人工甘味料)、うま味物質(グルタミン酸、核酸関連物質など)をはじめ、各種味物質に対する応答を記録し、内因性カンナビノイドであるアナンダミド投与後の変化について解析した。その結果、カンナビノイド投与後、甘味応答が増大する傾向が認められた。味細胞応答については酵素処理により単離した味蕾の味孔部周辺上皮部分を刺激ピペットで固定し、細胞基底部からルースパッチ法により味細胞の活動電位を記録し、内因性カンナビノイドによる変化を解析した。その結果、味細胞の甘味に対する応答が増大する傾向がみられた。さらに、各種味物質に対する摂取量を短時間(10秒)リック測定法により求め、アナンダミド投与後の変化について検索したが、まだ明確な結果は得られていない。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (4件)
Nature 438
ページ: 1022-1025
Chem Senses 30
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