研究課題
ヒトの肥満や高脂血症をもたらす食調節系の異常は、通常野生動物では考えられない生理的調節系の制御範囲をこえる極めて強い食への嗜好性や嗜癖性によりもたらされているものと思われる。しかし、その成因やメカニズムについてはまだ多くは謎のままである。我々は近年、脂肪細胞由来の飽食ホルモン・レプチンが味細胞に受容体をもち、甘味を選択的に抑制することを発見し、レプチンは脳における食調節とともに、末梢の味覚器を介して食嗜好性調節に関与する可能性を示した。しかし、レプチンの甘味抑制効果はコントロールの約20%と弱く、肥満マウスの甘味感受性の増大は数10%と大きいことからレプチン以外のシステムの存在の可能性も考えられる。そこで、本研究では、カンナビノイドに着目し、その味細胞における受容体の発現、味応答の修飾効果、そのレプチンとの拮抗性について調べ、末梢味覚器からの情報による食嗜好性の形成・調節のメカニズムについて検索する。マウス味細胞における受容体分子発現についてはIn Situ hybridization法および免疫組織化学法により検索した。その結果カンナビノイド受容体がいくつかの味蕾内の細胞に発現していることが確認された。また、甘味受容体との共発現についても限られた細胞で認められた。次に、カンナビノイド投与による鼓索神経応答の変化を測定したところ、甘味応答がコントロールの約30%程度増大することが明らかになった。しかし、投与後の時間経過が必ずしも安定しておらず、神経応答による解析には限界があることが分かった。単離味蕾標本による活動電位発生味細胞のルースパッチクランプ法による解析では、カンナビノイド、その拮抗薬などによる応答修飾効果が認められた。結果は神経応答において得られたものと類似していた。
すべて 2007 2006
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