本研究では、in vivoでの遺伝子抑制を個別の臓器で行う技術としてsiRNAと超音波導入法の唾液腺への適応技術を開発することを目指している。モデル動物としてオスのウイスター系ラット(7-9週齢)を用いて以下の実験を行った。1)標的遺伝子の検討、対象としての最適な唾液腺の検討:初年度の本年度は、まず予備実験としてハウスキーピング遺伝子、GAPDHおよびβ-actinをsiRNAの標的遺伝子としての妥当性を検討した。GAPDHおよびβ-actin共に耳下腺・顎下腺で定量的PCRおよびウエスタンブロットにて発現がみられた。ラットGAPDHに対する抑制効果が検定されている既成のsiRNAを使用し、GAPDHに対し抑制を試み、β-actinにて標準化することとした。超音波による遺伝子導入法として報告されている強度の超音波照射を行ったところ、顎下腺では照射のみでGAPDHの発現が2倍以上となり今回の研究に適さないと考えられた。一方耳下腺では、1.2倍程度の変化であり研究対象として耳下腺を用いることとした.2)蛍光標識siRNAによる導入効率の検討:現在までcDNAの導入などについて報告されている超音波遺伝子導入法のsiRNA導入効率を検討するため、既存の導入試薬(オブチゾン)を用いてsiRNAの導入を試み、導入効率、導入される範囲などを検討した。Cy3標識されたsiRNAを導入試薬と混合し逆行性に腺体内に注入、経皮的に腺体へ超音波を照射後、摘出し薄切切片を作成、蛍光顕微鏡にて導入されたcy3-標識siRNAの蛍光を観察した。3)GAPDHに対するsiRNAによる導入効率の検討:同様の目的で、GAPDHに対するsiRNAを用いて逆行性挿管よりの導入を行い、超音波強度、照射時間、DUTY比、導入試薬濃度などのパラメータを検討した。照射24-120時間後に腺体を摘出し、定量的RT-PCR及びウエスタンブロットによりGAPDH発現量の抑制を観察した。2)及び3)により逆行性導入によるsiRNAの唾液腺(耳下腺)への導入について導入試薬濃度、使用するsiRNA濃度、超音波強度、照射時間、DUTY比の最適化を現在進めている。リポフェクション試薬の使用についてもパラメータを検討して、超音波導入試薬との導入効率を比較する予定である。
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