研究課題/領域番号 |
17659594
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
千葉 逸朗 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (50250460)
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研究分担者 |
小林 美智代 北海道医療大学, 歯学部, 助手 (80316265)
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キーワード | Osteprotegerin / Porphyromonas gingivalis / Gingipain / 血管内皮細胞 |
研究概要 |
【背景・目的】歯周病を含む慢性的な細菌感染は炎症性の骨吸収を起こすことが知られている。骨芽細胞より産生される破骨細胞分化誘導因子(receptor activator of NF-κB ligand : RANKL)とその囮(おとり)レセプターである破骨細胞形成抑制因子(Osteoprotegerin : OPG)は、骨代謝の中枢を担うサイトカインであり、細菌感染による炎症性骨吸収においてもOPG/RANKL系が重要な役割を演じていることが推測されている。一方、血管内皮細胞もOPGを比較的多量に産生しているにもかかわらず、その役割についてはほとんど研究がなされていない。この研究は、血管内皮細胞から誘導されるOPGの発現動態およびその機序を明らかにすることにより、歯周病における血管内皮と骨のリモデリングとの関わりを明らかにすることを目的とする。平成17年度においてそれらPorphyromonas gingivalisのシステインプロテアーゼ(gingipain)により血管内皮細胞のアポトーシスが誘導され、その際にOPGが産生誘導されることを見出した。 【方法】P.gingivalis培養上清からSephacryl S-200にて粗分画を行いgingipain活性の高い同細菌の細胞外蛋白を得、それをgingipainとして使用した。ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVEC)をOPGと共に12時間培養した後、さらにgingipainとともに24時間培養し、アポトーシスを位相差顕微鏡およびMTTアッセイにて測定した。 【結果と考察】位相差顕微鏡の観察においてHMVECはgingipain処理後2時間で細胞付着能の低下が認められ、16時間でほぼ完全に付着性を失い、24時間でアポトーシスが認められた。一方、システインプロテアーゼ阻害剤であるTLCKによりgingipainによる血管内皮細胞の付着性の喪失は完全に抑制された。またOPGで前処理することによりHMVECの付着性の喪失およびアポトーシスはOPGの濃度依存的に抑制された。以上のことより、OPGはgingipainによる血管内皮細胞のアポトーシスを抑制することが示された。これらの結果は、OPGはP.gingivalisによる感染に対して血管内皮細胞における生体防御作用を担っていることを示唆すると考える。
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