研究概要 |
(1)ヒトマラッセ上皮遺残細胞および歯肉上皮細胞の培養 矯正治療を目的として九州大学病院を受診した患者様の中から、本研究に賛同の得られた患者様の健康な歯牙の抜歯の際に、歯根及び2mm×2mm程度の歯肉上皮を採取した。歯根の中心付近から根尖部にかけて歯根膜を剥離し、酵素処理を行いケラチノサイト用選択培地中で培養し、増殖してきた細胞をマラッセの上皮遺残細胞とした。また採取した歯肉上皮を同様な方法で培養し、歯肉上皮細胞を得ることに成功した。しかしながら歯肉上皮細胞と比較してマラッセの上皮遺残細胞は極めて数が少なく、また増殖能も高くなかったことから継代数は3程度で、長期の培養は困難であることがわかった。 (2)ヒトマラッセ上皮遺残細胞および歯肉上皮細胞との遺伝子発現 2継代したこれらの上皮細胞よりtotal RNAを回収し、cDNAマイクロアレイ法にてマラッセの上皮遺残細胞および歯肉上皮細胞との間で発現量が異なっている遺伝子を検出した。その結果、S100カルシウム結合タンパクがマラッセ上皮遺残細胞に多く発現していることが判明した。このタンパクに関しては、ラットの骨芽細胞の石灰化を抑制(Duarte WR et al., 1998)し、また牛の歯根膜は歯小嚢、歯乳頭、歯肉の細胞よりも遙かに多くこのタンパクを発現している(Duarte WR et al., 1999)ことが報告されている。またマラッセの上皮遺残細胞に多く発現している幾つかの未報告の遺伝子を検出しており、これらの特異性についてRT-PCR法にて解析を行っている (今回の研究は九州大学歯学研究院の生命倫理委員会にて認可されている)
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