研究概要 |
本年度は,多層カーボンナノチューブ(MWCNTs)を用いた細胞培養用スキャホールドの作成,骨髄幹細胞の採取およびスキャホールド上での培養,さらにマイクロアレイの分析による遺云子発現に及ぼすMWCNTsの影響を検索した. MWCNTsを酸処理し不純物を除去後,脱イオン水中で超音波処理により分散した.この溶液をPTFE膜およびPC膜で吸引ろ過し,MWCNTsを膜に固定することで,骨髄幹細胞培養用のスキャホールドを作製した.SEM観察にて,MWCNTsが固有のチューブ状の構造維持したまま,膜表面にほぼ一様に固定されていることが確認され,また,培地に浸漬してもMWCNTsは膜から剥離しないことから細胞培養用スキャホールドとして使用可能であることが示された.このスキャホールド上で骨芽細胞様細胞であるSaos2を培養したところ,増殖速度は,MWCNTsを固定していない膜に比較し速く,特にPC膜で顕著であった. Maniatopolousの方法に準じて,骨髄細胞をラット大腿骨から採取し,10日間初代培養した後,ディッシュに固着している細胞を回収し,骨髄幹細胞とした.この細胞をMWCNTsを固定したスキャホールドで培養し,コントロールであるポリスチレンディッシュで培養した細胞とマイクロアレイを用いて,遺伝子発現の差異を比較検討した.MWCNTsを固定しているスキャホールドでは,培養初期にインターロイキン,ケモカインなどの炎症性サイトカインの遺伝子の発現が認められるとともに,骨関連のクンパクであるMatrix Gla Protein,さらにはIGFなどの成長因子の遺伝子の発現が認められた. 以上の結果から,MWCNTsは骨髄幹細胞のスキャホールドとして有効であることが示唆された.
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