研究概要 |
歯科領域で使用されているフタル酸エステル類の唾液、牛乳、清涼飲料水への移行量並びに溶出されたそれら化合物の加水分解体の同定分析方法を確立することと薬物代謝酵素誘導能を評価するために薬物代謝酵素の一つであるCYP1A1遺伝子を導入した培養肝臓由来細胞を用いて、芳香族炭化水素の一つであるメチルコラントレン存在下での唾液に溶出した化合物並びにその加水分解体の薬物代謝酵素誘導能について検討した。HPLCを用いて、レジン系仮封材硬化体を唾液、牛乳、清涼飲料水などに浸漬するとDi-butyl phthalateとButylphthalyl butylglycolateなどのフタル酸エステル類が検出された。検出量は唾液と牛乳で顕著に多かったが、清涼飲料水では少なかった。レジン系仮封材硬化体からこれら溶媒に移行したフタル酸エステル類の一斉分析法は精度・簡便性に問題はなかった。Bisphenol A(BPA)誘導体とフタル酸エステルなどの化学物質がCYP1A1を誘導するかをin vitroで検討したところ、レポーターアッセイとNorthern blot分析の結果からBPA誘導体のうちBisphenol A diglycidyl ether以外はCYP1A1を誘導すると推測された。さらにDi(2-ethylhexyl)phthalateをはじめとする4種類のフタル酸エステルは単独では全く誘導しなかった。しかし3-メチルコラントレンとの共処理によりBPA誘導体とフタル酸エステルなど全てがCYP1A1遺伝子の発現を相乗的に誘導した。以上のことからHepG2細胞を用いたこのレポーターアッセイは生体異物のCYP1A1誘導能を予測する上で,有用な方法と考えられる。
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