研究概要 |
本研究は,特に細菌感染によるインプラント周囲炎に焦点を絞り,インプラント体の撤去を行うことなくチェアサイドでの処置によってオッセオインテグレーションを再獲得させる治療法を開発することを目的としている.そこで、日亜化学(徳島県)が世界に先駆けて開発した青紫半導体レーザー(410nm)を使って、チタン表面の殺菌とインプラントの母体であるチタン表面での光触媒効果を期待する方法について考案し、基礎的検討を行った.今年度も引き続き,青紫レーザーをチタンに照射したときの効果を,自浄性の評価として接触角測定,有機物分解作用の評価として有機色素であるメチレンブルーの分解試験,抗菌性の評価としてブドウ球菌付着試験(抗菌性)試験の3つから評価した.チタン面は#800の耐水紙で研磨したものをコントロールとし,酸化チタン水溶液処理,過酸化水素水処理,オートクレープ処理,窒化処理の4つの種類について検討した.照射光のPositive controlとして,紫外線を用いた. その結果,接触角試験においては酸化チタン光触媒溶液塗布試料においてレーザー照射後において有意に接触角が増大し疎水性が増し,細菌付着においては照射後に細菌付着が増加している試料も見られることから,これらについては見直さなければならないが,メチレンブルー分解試験において酸化チタン光触媒との併用により青紫半導体レーザーの照射により有意に有機物分解効果が得られた. さらに殺菌、光触媒効果を付与したチタン表面に対する骨芽細胞様細胞、線維芽細胞、筋芽細胞の表面付着状態について走査電子顕微鏡を用いて形態学的に検討した。その結果は何の処理もしないチタンとは差はなく、青紫レーザー照射による有害作用は認められなかった。 以上のことにより、我々が考案した青紫レーザー照射はインプラント周囲炎に対する周囲骨再生療法の一つの手段になり得ることが示唆された。
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