研究概要 |
近年進展が著しい酸化チタン光触媒を歯冠用レジンに添加して、その生体機能性を飛躍的に向上することを目的としている。光触媒はその強い酸化反応によってプラスチックのバインダーは破壊されるので、それらへの応用は不可能とされていた。しかしながら、酸化チタン粒子表面をマスクメロン模様の不活性セラミックスでコーティングした被覆型酸化チタンをコンポジットレジンのフィラーとして添加し抗菌性を付与する事が可能と思われた。 1.酸化チタンを添加したコンポジットレジンの作製 多官能コモノマー(TEGDMAとUDMA)と平均粒径8.4μmのシリカを液粉比で3:1に混和し、光重合開始剤と還元剤を加えた。これに、平均粒径5.0μmのマスクメロン型酸化チタンを、1,2,5,10wt%添加したコンポジットレジンペーストを調整した。また、酸化チタン無添加をコントロールとした。その後試験片を37℃水中に24時間と1ヶ月間浸漬し、3点曲げ強さを測定した。 24時間後には、酸化チタンを1wt%添加したものだけがコントロールより有意に低い曲げ強さを示したのに対し、他の3種類の酸化チタン添加コンポジットレジンはほぼ同じ値であった。水中浸漬1ヶ月後は、酸化チタン無添加のコントロールと1wt%添加したものが、24時間浸漬したものと比較して有意に曲げ強さが低下した。2,5,10wt%添加したものは若干低下しただけにとどまり、酸化チタンを添加したための有機物の破壊による物性の劣化はほとんど認められなかった。 2.抗菌効果の判定 酸化チタン無添加をコントロールとして、酸化チタンの配合量が異なる4種類の薄板状のコンポジット試験片を作製した。各種試験片の上にメチレンブルーを滴下し、1.5mW/cm^2の紫外線強度で6時間照射して脱色度を評価した。その結果、酸化チタンを10wt%添加したコンポジットレジンのみがメチレンブルーが脱色し、有機物分解作用があることが示唆された。 以上の結果から、マスクメロン型酸化チタンを添加した歯冠用レジンの表面には抗菌性があるのではないかと推察された。
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