研究概要 |
我々はBenettらの方法に従い,顎顔面領域の慢性痛が内分泌調節にいかなる影響を及ぼすか明にすることを目的として,ラット眼窩下神経の結紮(CCI : Chronic Constriction Injury)モデルを用い,神経,副腎皮質の組織学的検索を行うとともに,疼痛評価を行うためにタッチフィラメント(Von Frey hair)にて,眼窩下神経支配の顔面領域に一定の圧力をかけたときの反応を観察した.方法:Sprague-Dawleyラットを用いコントロール群と眼窩下神経を結紮したCCI群に分けた後,ラットを自由に自身で後ろに逃避できる程度にプラステック容器に固定し,暗室灯(赤色)照明下にて安静状態であること確認後,タッチテストを片側につき10回行い,逃避回数をカウントした.タッチさせる際は,力を一定にするために頬部に接触後フィラメントを一度停止させてから再度圧力をかけた.テストは術前1回,術後計12回行った.結果:タッチテストの結果,CCIにより結紮を行ったラット群は,術後25〜45日において,コントロールと比較して逃避する回数に増加する傾向が認められた.これは,結紮に伴う慢性痛が持続していることに由来するものと考えられる.今回,動物自発運動測定装置に関する検討に際して,当初予定していた機器の不都合が予想されたため,別の機種に変更した.これまでの,フィラメントの結果と自発運動測定装置との結果の比較は現在解析中である.さらに,同実験で下垂体-副腎皮質系の活動変化の指標である血液中のコルチゾールとACTHの濃度解析を行った。術後45日目には眼窩下神経ならびに副腎皮質を摘出採取し,切片標本にし,HE染色を施し観察を行った.また,ELISA法にて血漿中のコルチコステロン,ACTHの濃度測定を行った.組織標本では,結紮により副腎皮質索状層におけるコルチコステロンを含む液胞の数の増加とサイズの増大が観察された.また,CCI群では血液中のコルチコステロン濃度はコントロールと比較して有意な低下が認められ,一方ACTH濃度はコントロールと比較して有意な増減は認められなかったがACTH濃度の高い個体では副腎皮質機能の亢進像が認められた.
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