研究概要 |
歯原性疾患とくに歯原性のう胞と歯原性腫瘍の顎骨吸収のメカニズムを検討する基礎研究として以下の研究を行った。 顎骨のう胞および顎骨腫瘍の骨-病変境界の解析。外科手術により切除された組織の解析に対して同意の得られた患者標本から、病変と顎骨境界を解析できるように、ホルマリン固定、EDTA脱灰したパラフィン切片を作成し、破骨細胞の同定をTRAP染色、歯原性上皮細胞の産生する破骨細胞誘導因子としてPTHrPおよびRANKLの免疫染色をおこなった。その結果、顎骨の病変側に有意にTRAP陽性の破骨細胞の存在が確認され、破骨細胞周囲には吸収窩が観察された。これより、のう胞性疾患や歯原性腫瘍の骨吸収、病変の増大に破骨細胞の誘導、活性化が関与していることが示唆された。破骨細胞を誘導・活性化する局所因子としてはPTHrP,G-CSF,IL-10などの因子が候補として挙げられる。そのうち、歯原性上皮細胞が産生することが知られているPTHrPと破骨細胞を直接誘導しうるRANKLタンパクの免疫染色を行った。その結果、PTHrPとRANKLは歯原性上皮細胞に弱い陽性を示した。また、RANKLは破骨細胞周囲の骨芽細胞にも陽性所見を示した。以上の知見から、(1)歯原性上皮細胞はPTHrPタンパクを産生し、骨芽細胞に作用して骨芽細胞のRANKL発現を促進する機構、(2)歯原性上皮細胞が産生するRANKLが直接破骨細胞を誘導・活性化する機構の二つが存在する可能性が示唆された。 また、臨床的見地からの報告として、本年度にあらたに改正されたWHOの組織学的分類では歯原性腫瘍に分類された石灰化歯原性嚢胞の骨吸収あるいは隣接歯牙との関係をレントゲン的に検討した報告を行った。
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