研究概要 |
う蝕原性細菌として知られているStreptococcus mutansの様々な主要な表層タンパクの欠失株を用いて,ヒト多型核白血球による食作用を検討した.すると,Protein antigen c(PAc)およびBiofilm regulatory protein A(BrpA)を欠失させた株で有意に低い食作用率を呈した.そこで,ラット頸静脈よりそれぞれの菌を感染させ,その影響を検討した.この菌血症モデルでは,PAcおよびBrpA欠失株が血液中で有意に長期間にわたり検出され,それが全身性炎症の惹起につながっていることが示された. 感染性心内膜炎は,主に基礎となる心疾患が存在する対象で発症すると考えられている.これまでに行われてきたカテーテルを用いて心臓弁を損傷する機械的なモデルの改良のため,簡便にかつ効率的に心内膜を損傷するモデルの確立を行うこととした.まず,成長期ラットの食餌中に様々な濃度のコラーゲン阻害剤を混入させ,心内膜へ与える影響を検討している.今後,菌血症モデルおよび心内膜炎モデルを用い,病原性の比較検討を行っていく予定である. さらに,S.mutansに関する検討に加え,感染性心内膜炎患者血液より実際に分離された様々なレンサ球菌の基礎的な分析を行っている.特に,Streptococcus sanguinisに関しては,口腔分離株との分子生物学的性状の比較から,病原性に関与すると考えられる表層構造物の特定を進めている.
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