研究課題
エナメルマトリックスは、歯のエナメル質形成に必須なマトリックス蛋白である。しかしながら、近年遺伝子変異マウスを用いた解析から、これらエナメルマトリックスはエナメル質形成のみならず、細胞の分化や増殖を調節する可能性が示唆されてきた。エナメルマトリックス蛋白の1つである、アメロジェニン欠損マウスでは、歯根表面の吸収が認められる。このことからエナメルマトリックスは、歯根吸収に大きな役割を演じていることが考えられる。実際、エムドゲインと呼ばれるブタのエナメル蛋白抽出物は、歯周組織再生の為に臨床で応用されてきている。しかしながら、その分子メカニズムは全く理解されていない。そこで、本年度は、エナメルマトリックス(アメロジェニン、アメロブラスチン)の破歯(骨)細胞に及ぼす影響についての分子メカニズムの解明を試みた。マウスの大腿骨骨髄細胞をセファロースG-10カラムを通過させ破骨細胞前駆細胞を調整し、細胞をRANKLおよびM-CSF存在下で、in vitroで破骨細胞形成を行った。この培養上清中にリコンビナントアメロジェニンを添加し、破骨細胞形成能をTRAP染色にて、培養3日目、5日目で評価した結果、アメロジェニンは破骨細胞の分化に全く影響を及ぼさなかった。一方、アメロジェニン蛋白を初代培養骨芽細胞に添加し、この細胞を破骨細胞前駆細胞と共培養を行った結果、アメロジェニン処理群で、破骨細胞の分化が著名に抑制された。以上の結果から、アメロジェニンは破骨細胞前駆細胞に直接作用するのではなく、骨芽細胞を介して破骨細胞の分化抑制に関わっていることが明らかとなった。アメロジェニンを添加した際の、細胞内シグナル分子の一つMAPKinaseのリン酸化を検討した結果、アメロジェニン添加後15分でリン酸化され、このリン酸化を抑制すると、骨芽細胞からのフィブロネクチンの発現抑制が認められ、破骨細胞形成が促進される結果を見出した。このことは、アメロジェニンが増殖因子用の作用を有することを示唆した。
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Archives of Oral Biology 52.3
ページ: 237-243
Journal of Oral Bioscience (in press)(印刷中)
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