研究概要 |
今年度はTHP-1分化マクロファージを、P.gingivalis LPSとE.coli LPSにより刺激した際の遺伝子発現の違いを解析した。THP-1をPMA(200nM)を添加した10%FCSを含むRPMI1640培地にて48時間培養し,マクロファージに分化させた。分化した細胞に抗原としてP.gingivalis, E.coli由来LPS(1μg/ml)を10%FCS存在下で添加し刺激した。刺激後6時間における遺伝子発現の違いをAffimetrix社製のHuman Genome U133 Plus 2.O Arrayを用いたDNAマイクロアレイ法により解析した。その結果、P.gingivalis LPS刺激においてE.coli LPS刺激と比較して2倍以上発現上昇がみられた遺伝子は478、一方E.coli LPS刺激においてP.gingivalis LPS刺激と比較して2倍以上発現上昇がみられた遺伝子は628であった。P.gingivalis LPS刺激において発現上昇が見られたのはDNA複製に関わる遺伝子、一部のサイトカインレセプター遺伝子などであり、E.coli LPS刺激においてにおいて発現上昇が見られたのはケモカイン、サイトカイン、一部のシグナル伝達分子の遺伝子などであった。特に、これまで注目してきたToll-like receptorのシグナル伝達を負に制御しているIRAK-Mの遺伝子発現はマイクロアレイ解析でも、P.gingivalis LPS刺激においてE.coli LPS刺激と比較して2倍以上の発現上昇を認めたことから、P.gingivalis LPSは,マクロファージにおけるIRAK-M発現を特異的に増強することで炎症性サイトカイン産生を抑制し,宿主細胞の低応答性に関与している可能性が強く示唆される結果となった。
|