研究概要 |
昨年度にマウスES細胞から樹立した神経堤細胞様細胞クローンNCSCD4およびマウス骨髄細胞を用いて、歯胚の分化誘導の実験を行った。昨年度は、Sharpらの方法(J Dent Res 83:518-522,2004)を用いたが、彼らの方法を忠実に再現したにもかかわらず、NCSCD4細胞および骨髄細胞を用いた移植組織からは歯胚が形成されず、彼らのようなpositiveな結果(胎生10.5日マウス第一鰓弓上皮と骨髄細胞を用いた移植組織から歯胚が形成されるという結果)は得られなかった。彼らの方法ではNCCD4細胞および骨髄細胞を歯上皮下で3次元的に密集して培養することがうまくできない点に原因がある可能性が考えられた。そこで、NCSCD4細胞および骨髄細胞を歯上皮と密着して培養できるように、Tujiらの方法(Nature methods 4:227-230,2007).を参考にしてコラーゲンゲルを用いた検討を行った。すなわち、NCSCD4細胞および骨髄細胞の細胞塊の上に胎生10.5日から胎生14.5日のGFPマウスの第一鰓弓上皮あるいは歯上皮を被せ、コラーゲンゲル内で2日間培養した後、マウス腎皮膜下に移植した。移植後14日で組織を組織学的に解析した。まず、Tujiらの成績、すなわち、マウス胎生14.5日のGFPマウス歯上皮と歯間葉の共培養組織を腎皮膜下に移植後14日で歯胚が形成されることを確認した。歯間葉に代えて骨髄細胞を用いた移植実験では、胎生10.5日から胎生14.5日のGFPマウスの第一鰓弓上皮あるいは歯上皮のどの時期の上皮を組み合わせても歯胚は形成されなかった。NCSCD4細胞と胎生10.5日から胎生14.5日のGFPマウスの第一鰓弓上皮あるいは歯上皮の組み合わせ実験では、胎生10.5日の上皮では全く歯胚様組織は形成されなかった。胎生11.5日から胎生12.5日の歯上皮との共培養では、歯胚様組織が低い頻度ながら認められた。この組織が歯胚組織と言えるものなのか、現在、組織学的に検討中である。
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