1.分化誘導したES細胞と歯上皮を接合させて歯胚を作成する。 マウスES細胞から樹立した神経堤細胞様クローンNCSCD4と歯の形成能を有する胎生11.5日のマウス下顎上皮を2日間共培養した後、マウス腎皮膜下に移植し、移植14日後に移植組織を解析した。骨軟骨組織などが形成されたが歯胚組織は形成されなかった。そこで、笹井らの方法によりES細胞から神経堤細胞を分化誘導し、この細胞と胎生11.5日の下顎上皮を2日間共培養した後、腎皮膜下に移植した。移植14日後に移植組織を解析したが、骨軟骨組織などが形成されたものの歯胚組織は形成されなかった。そこで、ES細胞から分化誘導した神経堤細胞の密度を高める種々の工夫をして下顎上皮と共培養したが、年度内に歯胚組織の作成成功には至らなかった。 2.歯間葉と口腔粘膜上皮を接合させて歯胚を作成する方法を開発する。 分化誘導したES細胞と歯上皮を接合させて歯胚を作成することができなかったので、研究計画を一部変更して、歯の形成能を有するとされる胎生12.5日のマウス下顎歯間葉組織と種々の日齢の口蓋粘膜上皮組織を接合させ、2日間共培養した後、マウス腎皮膜下に移植した。14日後に移植組織に歯胚が形成されるか調べたところ、生後2日齢までの口蓋粘膜上皮組織を用いると歯胚が形成されるが、それ以後の口蓋粘膜上皮組織では歯胚が形成されないことが判明した。そこで、口蓋粘膜上皮細胞を1週間培養し、胎生12.5日のマウス下顎歯間葉組織と接合させて、口蓋粘膜上皮組織と同様の方法で歯胚の作成を試みたところ、生後4週齢までのマウスから単離・培養した口蓋粘膜上皮細胞で歯胚が形成された。この結果により、ES細胞から胎生12.5日のマウス歯間葉組織を分化誘導できれば、歯上皮の細胞は生後4週齢の培養口蓋粘膜上皮細胞を用いても歯胚を作成することが可能であることが示された。
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