今年度は、目標管理制度についての文献レビューを中心に実施し、その後、大規模病院4施設の看護部長ヒヤリングを実施した。これら施設は目標管理導入に熱心な病院を機縁法で選定したもので、クリニカルラダーの導入もあわせておこなっていた。 ドラッガーによって提唱された目標管理は、わが国には1960年代に一度導入されたが定着せぬまま終わった。主たる理由は、(1)当時は労働者の主体性重視といった目標管理制度の生命線といえる特徴があまり重視されず、結局ノルマ管理になったこと、(2)具体的な成果目標にするためにすべての目標を数値で表そうとしたことにあったと指摘されている。90年代後半には現在につづく第二次ブームが起こるが、かつての失敗を教訓とするためにどのような工夫がなされているのかは注目すべき点である。 また、同じ目標管理制度といっても、導入のねらいをどこに置くかによっていくつかの類型が成り立つことも文献から示唆された。一般企業での導入・運用実態との比較においては、看護職場におけるそれは能力開発に非常に重きをおく点が特徴的でありかつ一種の偏りでもあると考えられた。 上記は、その後のヒヤリングにおいてもより明確となった。看護職員の臨床実践能力評価にかかわるクリニカルラダーを導入している施設では、ラダーと目標管理制度とを密接に関連し、個人目標がそのまま個人の能力開発目標に置き換えられるケースもあった。他方で、ラダーは職員個々人の能力開発・キャリア開発の手段、目標管理は組織にどう貢献するかを本人に考えさせる手段すなわち組織貢献への動機付けだとして、明確に2つを使い分けている施設もあった。これらが賃金制度(成果主義賃金体系)と結びついた場合どうなっていくのかを含めて、さらに論点を整理し、次年度の最終の全国調査に臨む予定である。
|