医師は、悪い知らせを伝えられた多くの患者が一時的に衝撃を受けても事実を受け入れ、治療に向き合っていくことから、患者の知る権利として伝えるが、できるだけ早いタイミングで、伝えた後の対処やサポート、相手に合わせた伝え方、内容を考えて悪い知らせを伝えるべきであると考えていた。また、伝える意義は、患者の知る権利や自己決定の幅を広げるとしながらも、治療をスムーズに進めていくためであった。 癌や再発・転移、治療が難しい状況をどのように伝えるかということは、治療の可否が基盤にあり、癌疾患とその治療の特徴、延命治療に関する考え、終末期医療に対する捉え方により影響されていた。現在、癌や再発・転移は伝えられても、治療が厳しい状況は伝えにくく、終末期医療での患者の意思決定への課題を残していた。多くの医師は、悪い知らせを伝えることはできれば避けたいと感じているものの、仕事上避けられないこととして努力していた。 悪い知らせを伝える物理的環境や時間の確保やあまり整備されていない。悪い知らせは、医師が経験的に確立した方法で患者の反応を捉えながら、癌の確定診断プロセスにそって、悪性腫瘍、癌の可能性、癌と、治療ができるという希望を提示しながら伝えられることが多かった。また、治療の決定に向けては複数の選択肢の提示やセカンドオピニオンを患者の希望に沿って行っていた。最初の治療は、ある程度医師の提示する治療に進められるが、病状の進行に伴い、治療法の選択は患者に任せられる傾向であった。 伝える前に家族に先に話すことは、個人情報保護法に沿えばよいと考える反面、家族とのトラブルやクレームを避けたい気持ちから、患者の意思に反した家族の決定に倫理的矛盾を感じながらも患者の意向より家族の意向に沿っていた。 悪い知らせの伝え方は、医学の基礎教育や学会等の影響はなく、医師自らが責任を持って患者を診療する経験によって形成されていた。
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