研究課題
寝たきりを恐れるあまりに転倒などの事故の危険を顧みずにリハビリテーションを試行錯誤する虚弱高齢者を、移動能力と転倒予防自己効力感によってスクリーニングを試みた。長野県T市の高齢者基本健康診査の結果と転倒予防自己効力感の測定結果を用いて、身体機能と転倒予防自己効力感の側面から対象者を分類し、寝たきり恐怖の有無や寝たきり恐怖に伴う事故リスクの有無との関連を明らかにすることを目的とした。対象は、長野県T市で2005年に高齢者健診を受診した地域高齢者803名のうち、面接調査に同意した16名(男性1名、女性15名)であった。高齢者基本健康診査の一部として実施されている10m全力歩行時間を6.0秒以上/未満と転倒予防自己効力感を30点以上/未満で4群に分け、各群から任意に対象者が選出され、説明と同意の手続きの後、訪問し、寝たきり恐怖、寝たきり恐怖に伴う事故リスク、閉じこもりの有無、日常行動をインタビュー・観察した。その結果、4群のいずれでも寝たきり恐怖があると答え、歩行時間が遅く・自己効力感が低い群に特徴的に寝たきり恐怖が現れるということはなかった。また高齢者は草取りひとつをとってもそれぞれの身体機能に応じたやり方を工夫しており、たとえば虚弱高齢者は這うようにして畑の中を移動しており、寝たきり恐怖によって転倒などの事故リスクを高めるような試行錯誤が見られるかどうかを1〜2回の訪問・観察で定義することはできなかった。結論として、寝たきりを過度に恐れる気持ち「寝たきり恐怖」は高齢者が明確に自覚しているものではなく、調査票等による把握は困難であることがわかった。寝たきり恐怖の自覚の有無にかかわらず虚弱高齢者に普遍的なアプローチを行うことにより、自己判断による高齢者の身体機能を超えた行動を予防し、転倒などの事故のリスクにさらされることを防ぐプログラムを作ることが有効と考える。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
身体教育医学研究 8・1
ページ: 45-52
地域リハビリテーション 1・9
ページ: 772-775
身体教育医学研究 7・1
ページ: 7-14