生涯を通じ継続した支援を必要とする慢性疾患患児と家族に対する行政の保健分野に所属する保健師の援助のあり方について、特に就学を境に学校保健の対象となる慢性疾患患児とその家族に対する行政の保健分野に所属する保健師の援助のあり方を追求した。 1.学齢期の慢性疾患患児への保健師の援助実態調査 質問紙を用いた郵送調査を実施した結果、保健師の学齢期の慢性疾患患児への援助経験は乏しく、これらの対象への支援が十分でないことが明らかになった。また、保健、医療、福祉、教育という慢性疾患患児の生活にかかわる機関との連携が十分に行われていないことや、支援体制を支える地域のシステムの不備等が示唆された。 2.学齢期の慢性疾患患児への保健師の援助内容に関する調査 上記の実態調査対象者から面接調査協力の同意が得られた保健師を対象に面接調査を行い、具体的な援助内容や援助方針決定に至った保健師の詳細な認識、意図、地域での支援充実に向けた方策等を調べた。その結果、援助を充実させるための要因として、関係機関と保健師が共に取り組む活動の機会を活かして連携体制の確立を図ること、早期発見・早期介入を可能とするためのきめ細かな母子保健活動の充実、国や県のモデル事業の機会を活かした保健・福祉・教育分野との連携活動の展開、福祉分門に所属する保健師の役割の発揮、就学前からの支援野実施に向けた保育所との連携強化、養護教諭の力量、保健師の専門性と責任性の自覚を高めることが関係していることが確認できた。また、保健師の援助の実際から援助実施上の課題について、対象別に慢性疾患患児とその家族、保育所、学校、教育委員会、医療機関、保健師、その他に分けて整理し、保健師の援助のあり方について考察した。
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