本年度は、足把持力測定器の開発とその測定器から得られる測定値の信頼性と妥当性の検討を行う目的で以下のことを実施した。 1)足把持力測定器の開発については、村田伸および山崎先也が株式会社八神研究開発部の協力を得て行った。測定装置には八神理化器製のひずみゲージを用いた。ひずみゲージとは金属のひずみ量、応力(単位面積あたりにかかる力)を測定するのに用いられるセンサーである。その利点は応答周波数が高く精密な値が抽出できること、出力が電気量のためデータ処理が容易であることなどがあげられる。本測定器は、ひずみゲージを木製の基礎板(65cm×25cm)に固定し(可動式継手により30度可動)、直径5mmのステンレス製鋼線をひずみゲージの力点になる部分に取り付けて、足趾把持バーとした。また、足趾で把持したときの疼痛発生予防のために鋼線を合成樹脂でコーティングした。足部は下腿前面を木製バーで固定し、後面は膝や足関節の代償運動が生じないように、測定器から踵部を離さないこととした。なお、基礎板の踵部を乗せる部分にセンサーを取り付け、踵部が測定器から離れるとブザーが鳴るようにした。ひずみゲージからの信号は、増幅装置とアナログ/デジタル変換器を内蔵した専用ボックスに接続され、デジタルデータとしてパーソナルコンピュータに記録・保存されるようにした。なお、データはサンプリング周波数10Hzと100Hzに切り替えが可能であり、測定範囲は0〜99.9kg、最小単位は0.1kgである。 2)測定値の信頼性と妥当性の検討には、健常成人8名の左右16肢を対象に行った。その結果、足把持力の最大値は平均13.2kg±2.5(最低値9.6kg-最高値19.2kg)、最大値までの到達時間は平均1.3sec±0.5(最遅値2.4sec-最速値0.6sec)であり、それぞれの測定値が片足立ち位での重心動揺などと有意な相関を示し、測定値の妥当性が示された。これらの結果については、平成17年度日本健康支援学会で報告した。このような結果を踏まえ、来年度は高齢者や障害者に対して測定を行い、足把持力と立移動作や転倒との関連性についてさらに検討を進めたい。
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