研究成果としては以下の3つとなる。第一に、外国語作文の自動採点を実現するために、日本人の英作文とnativeによる校正結果から校正ルールの自動抽出の研究を行っている。具体的には日本人著者による作文8万文とその校正から編集距離を用いて校正ルールを得る。結果は、国内会議論文として発表を行ったほか、現在国際会議論文として投稿中である。 第二に、用例検索システムの構築とその大規模評価を行った。本システムは、サーチエンジンからユーザのクエリに関係するページを得て、それを集計することで、動的に用例を得るものである。語学学習者の一つの悩みは、用例をいかに得るかという点にある。辞書やKWICがこの問題の解決策として挙げられるが、より現代的な解決方法としてサーチエンジンを用いることがある。しかし、web上の文書は質が問われるものも多いため、結果を集計して確実な用例を得る必要がある。本システムは国際会議論文として発表し、Best presentation賞を得た。また、発表後にシステムを大改良し、結果の検証を行って、現在英文ジャーナル論文として投稿中である。 第三に、日本語・中国語学習者のための漢字検索システムの研究を行った。日本語や中国語学習者の最大の問題は、漢字をいかに検索するかという問題にある。なぜなら、漢字の書法は伝統に基づいているため、初めて漢字に接する外国人には、書き順や部首がすぐにはわからず、辞書が引けないからである。本研究では、漢字を縦、横、その他のストロークとみなし、全漢字を辞書で引けるようにした。これについては、特許を申請したほか、現在ユーザ実験を行っている最中である。産業移転も考えている。 基幹となる語学学習支援システム「天神」システムについては夏に大規模改良を行ったうえで、予定どおりサーバ類を購入の上設置し、サービスを開始した。とはいえ、実質本システムを利用したクラスは2クラスにとどまった。語学学習にe-learningを導入することは、文系教員の協力が必要であるが、文系教員の中には計算機に慣れていない者も多く困難が伴う。とはいえ、少数の前向きな教員らと共に、初心者でも使いやすい語学学習支援システムのインターフェースを現在検討中である。
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