本年度は、独立した移動個体が多数存在する環境において、局所的な遭遇および交渉過程によって形成されるネットワークをモデルとし、このネットワークが全体として特定の機能構造を持ちうるための条件について明らかにした。具体的には、特定の機能構造としてスモールワールド型ネットワークを念頭に置き、(1)特定の機能構造を持っための定性的な性質、(2)ネットワーク時間発展の定式化による、ネットワーク特徴量と設計パラメタの関係解析、(3)ネットワークにおけるショートカット率の定式化による、パラメタ空間に対する機能構造発現可否分岐の解析、を行った。 旧来の研究では、数学的に理想化された環境で、移動体の不連続なジャンプを仮定してモデル化がめられていたが、本研究では確率モデルとグラフ理論上の知見から解析を始め、連続的に動作を続ける独立移動個体間の局所的な相互作用によって形成されるネットワークに対して、機能構造発現のモデル化に成功した。定性的な知見として、均一な行動をとり続けるのではなく、周期的に相対的に少数のクラスタへ移動体が集合し、およびそこから拡散することによって、旧来の研究における不連続なジャンプを代替できることを明らかにし、その上で個体に設定されたパラメタが対極的に形成されるネットワークに与える効果について定式化に成功した。さらに、機能構造発現に重要な役割を果たすと考えられている、ネットワークのショートカット率についても定式化に成功し、機能構造発現の有無について判定基準を与えた。
|