研究概要 |
平成17年度においては,実際に様々な物体表面の反射特性を計測できるシステムの設計を行った.当初の研究計画段階では,試料を中心として,その周囲を光源とセンサが回転する機構を持った装置により,任意方向からの入射光に対する任意方向への反射光の強度の比率を計測することを予定していた.しかし,シミュレーションの結果,計測に膨大な時間を要することが明らかとなった. そこで,反射光学系を工夫することで回転機構を排除し,計測時間を大幅に短縮する試作機を実際に開発した.具体的には,凹面鏡を利用することで,一回の撮影で全方向の反射光を一度に計測できるように設計した.さらに,プロジェクタと凹面鏡を組み合わせることで,回転機構を用いずに光源方向を瞬時に切り替えることに成功した.これにより,光源方向と撮影方向をそれぞれ1度刻みに変化させた場合でも,2時間強ですべての組合わせのデータを計測できるようになった.これは,当初計画していたよりも,はるかに高速な計測装置である. 一方,試作システムを用いて実際に様々な試料を計測してみると,物体表面のテクスチャの存在よりも,むしろカメラのダイナミックレンジが狭いことによる精度低下がより問題であることが判明した.そこで,当初予定していた不均一なBRDFの取り扱い方法の確立は次年度の研究課題とし,先にカメラの広ダイナミックレンジ化に取り組んだ.実際に,液晶フィルタを用いたシステムを試作し,通常のカメラのダイナミックレンジを広げることに成功した.この成果は,論文誌に掲載された. 以上をまとめると,初年度は,主に計測機器の開発を中心に研究を進めた.
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